2023

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REVERBERATION

18 Nov - 26 Dec 2023, 6 Jan - 21 Jan 2024

【会期延長につきまして】
The Massにて開催中のNerhol ‘REVERBERATION’ 展はStandByでの公開制作、及びインスタレーション作品の新規展示に伴い、2024年1月6日(土)〜1月21日(日)まで会期を延長いたします。
年内は12月26日(火)まで開廊しておりますので、ぜひ多くの方々にご高覧いただけますと幸いです。
※12月25日(月)、12月26日(火)特別開廊
 
The MassではアーティストデュオNerhol(ネルホル)による新作展「REVERBERATION」を開催致します。 本展では近年Nerholの2人が継続的に取組んでいる帰化植物をテーマにしたシリーズを中心とした新作を発表致します。
飯田竜太と田中義久の2人からなるNerholは、主に彫刻を行う飯田と、支持体となる紙や平面的構成に向き合う田中、両者の行為の融合によって作品を制作しています。 Nerholは特定のモチーフの連続写真を何枚も物理的に積み重ね、それを彫刻し、出来上がった1つの作品によってそこに内包される重層的な時間と瞬間を語ります。そこに込められた時間や歴史の層に対し作品化するという彼らの試みは、他に類を見ない新しい物理的な形態と視覚的な美意識を纏い作品としてアウトプットされてきました。
 
本展にてNerholが発表する作品群のテーマとなっている帰化植物とは、本来の自生地から人間活動を含む様々な要因によって他の地域へ運ばれ、やがてその土地で野生化した植物のことを指します。
そこにはその植物やその植物を運んだ何か、またはその因果を作った人間の活動の歴史が存在しますが、まさにそこに介在する時間や歴史という概念こそNerhol作品に通底する欠かせないコンセプトです。
Nerholはどの作品においてもそういった時間の集積を紙の束に置き換え、彫刻をすることでそこに内包される「何か」を露わにしてきました。
画面には飯田の身体性と田中の思考性が伴われ、それらは2人が繰り返し行う「対話」という行為によってその密度を高めてきたと言えます。
言わばNerholの2人にとって「対話」という行為は既に作品制作の一部であり、むしろその中枢とすら言えるのです。
 
本展で発表される帰化植物作品はNerholが近年制作を続けてきたシリーズの1つであり、私たちが普段何気なく目にするものを再び意識させ、そこに向き合う時間を与えてくれる作品群となるでしょう。
私たちとは全く異なった時間軸の中で歴史的に生き残ってきた帰化植物は生命力と環境への適応力に溢れ、逞しさと美しさを湛えています。
 
写真でもあり、彫刻でもある。
瞬間でもあり、歴史でもある。
それらの要素のあわいに存在するNerhol作品は、様々な問いと挑戦に溢れ、普遍的なテーマを扱いながらも常に新しい表現を求めてきました。
それは美術の本質に迫る行為そのものであると言えるでしょう。
柔軟性や多様性、他者への理解が必要とされる対話という行為を繰り返しながら作品を生み出していくその形式こそがNerholのアートであり、現代社会においてそのような芸術活動が重要な行為であるように思えてなりません。
 
NERHOL
Nerhol(ネルホル)は、飯田竜太と田中義久の二人からなるアーティストデュオ。それぞれの活動を展開していた二人は、現代においていかにして問題を提起し、人に伝えていくかという方法論において共通項を見出し、2007年よりNerholとして活動を開始する。書物やそこに印された文字、世界に存在する図像の定型を異化するような探求にはじまり、2011年からは数分間かけて200カット以上撮影をした全て異なるポートレートを束ねて彫刻することで生み出される歪んだ人物像の立体作品を発表し、大きな注目を集める。その後、国内外の美術館やギャラリーの展覧会への参加を重ねるなか、街路樹、動物、水、あるいはネット空間にアップされた画像データや記録映像等、様々なモチーフを選びながら、それらが孕む時間軸さえ歪ませるような作品を制作。そこでは一貫して、私たちが日常生活を過ごすときには見落とされがちな有機物が孕む多層的な存在態を解き明かすことを試みている。
主な個展に「Affect」(第一生命ギャラリー / M5 Gallery、東京、2023年)、「critical plane」(Yutaka Kikutake Gallery、東京、2021年)、「Interview Portrait House and Room」(Youngeun Museum of Contemporary Art、韓国、2017年)、「Promenade」(金沢21世紀美術館、石川、2016年)、「Index」(Foam Museum、アムステルダム、2015年)など。主なグループ展に「第八次椿会 ツバキカイ8このあたらしい世界 / このあたらしい世界 2nd SEASON “QUEST”」(資生堂ギャラリー、東京、2021年 / 2022 年)、「New Photographic Objects 写真と映像の物質性」(埼玉県立近代美術館、2020年)、「VOCA展2020 現代美術の展望ー新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、2020年)、「めぐるりアート静岡」(静岡市美術館、2017年)など。主な受賞歴にVOCA賞(2020年)がある。
飯田は、1981年静岡県生まれ。2004年日本大学芸術学部美術学科彫刻コースを卒業、2014年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術専攻修了。現在は東京を拠点にしている。田中は、1980年静岡県生まれ。2004年武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科を卒業後、現在は慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程在学中。東京を拠点に活動を続ける。
 
※2023年12月25日(月)、12月26日(火)は特別開廊
©︎Nerhol, Courtesy of artist and The Mass
 
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John Pawson

14 April - 14 May 2023

ロンドンを拠点に活動し、世界で広く認知されている建築家、ジョン・ポーソン。ミニマリズムを継承し、ネオ・ミニマリズムの新しい考察を著した「Minimum」(Phaidon Press, 1996) の中でアート・建築・デザインの分野において自身のスタイルを極限まで論考し、近年は写真家としても国際的にその知名度を高めています。 写真家としての作品をまとめた書籍として「A Visual Inventory」(Phaidon Press, 2012)、 その5年後に「Spectrum」(Phaidon Press, 2017)を出版し、美術史家のキャリー・ス コットがキュレーションをした、ロンドンの中心部にある180 The Strandでのグループ展で建築的なインスタレーション作品が公開されました。2021年にはヴェネチア・ビエンナーレ第59回国際美術展の期間中、Casa Dei Tre Ociにて「John Pawson – A Point of View」 を開催、2022年には自身が設計したベルリンのBastian Galleryで、16点の新作を展示した 「John Pawson, Looking for Light」を開催しました。
 
「私にとってカメラは、創造的なプロセスにおいて不可欠なものです。他の人がスケッチブックを使って描き留めるように、レンズを通して自分が物事や景色をどのように見ているのかを記録する重要な手段なのです。」- ジョン・ポーソン
 
日本での初個展となる本展では、色彩、テクスチャー、構図といった細部から、光、空 気、人間の感情へと焦点を移し、ポーソンの世界に対する独自の視点を体験することができる構成になっています。The Massの3つのギャラリースペースと、隣接するStandByの半屋外のエリアに分かれ、The Mass Room 02, 03では、「Spectrum」のシリーズからセレクトされた作品を展示します。色調毎に並べられたイメージはポーソンの建築的観点からアプローチされる内容になっており、空間と作品の両方の視点から鑑賞することができます。Room 01では、被写体が彼自身の生活環境そのものである「Home」シリーズを発表いたします。この写真作品と対をなすように、原宿のキャットストリートに隣接して設計されたインスタレーションスペース StandByでは今回の展示のために制作された瞑想的な立体作品が展示されます。40年以上のキャリアを通して、ポーソンは自分の作品はアートではなく建築であるという考えを貫いてきました。三日月形の形状から 「Lunula」と名付けられたこの作品で、彼は意識的に’アート’と’建築’その区別の限界に 近づき、空間、表層、光、香り全てをシームレスに体験できる、唯一無二の滞在可能な作品を造り出しました。
 
20代半ばに名古屋で英語教師をしていたポーソンは、その後東京に移り住み、著名な建築家・デザイナーの倉俣史朗氏のスタジオを頻繁に訪れていました。本展はある種の帰郷のようなもので、当時の日本での経験や倉俣氏との出会いは、若き日のポーソンに強烈な印象を残し、建築、写真、デザインなど多方面にわたるキャリアに繋がるきっかけになったと言えます。
 
本展覧会に合わせ、ジョン・ポーソン氏と日本の現代美術家である杉本博司氏による トークイベントを開催いたします。本トークは、展覧会キュレーターのキャリー・スコットが進行役として参加し、両者の人生や様々な分野での仕事について語り合うまたとない機会となります。イベントの開催は4月14日(金)夕方を予定しておりますが、 The Mass内の特設会場の関係で当日は席確保が少数になる可能性がございます。そのため完全予約制、当日参加は不可とさせていただきます。本イベントの詳細(開始時間、予約方法)は、The Massのウェブサイト、またはソーシャルメディアを通じて随時更新予定でおりますので、ご確認ください。
 
 
ジョン・ポーソン(John Pawson) CBE, RDI
建築家。1949年 イングランド北部のヨークシャー地方ハリファクス生まれ。 家業のテキスタイル製造の仕事に従事した後に来日、日本では名古屋で英語教師として働き、数年間滞在。東京に移り住んだ後、イギリスへ帰国し、ロンドンの建築の名門で あるAAスクールで建築を学び、81年に独立。余分な装飾を排したミニマルな美学で認知度を広め、自邸のほか、アパートメント、店舗、ホテル、修道院、バレエセット、アー トギャラリーなど数多くの建築設計を手掛ける。 主なプロジェクトに、デザインミュージアム(ロンドン)、バスチアン・ギャラリー(ベルリン)、ノヴィー・ドゥール聖母修道院(ボヘミア)、ジル・サンダー表参道旗艦店 (東京)などがある。
 
John Pawson, Home, 2019, Courtesy of the artist
Photograph: Keishin Horikoshi / SS
 
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