2024

3

Needles and Pins

16 March - 14 April 2024

The Massではニューヨーク、ロサンゼルス、ソウル、コペンハーゲンをベースに活躍する国際的なアーティスト20名による展覧会「Needles and Pins」を開催いたします。
 
本展に参加するアーティスト: マーゴット・バード、ローラ・ギル、ジョーダン・イシップ、リッチ・ジェイコブス、アーロン・ジョンソン、河合美咲、倉田裕也、マット・レイナス、レイモンド・レムストラ、ゴーシャ・ラヴォチキン、ダン・マンデルバウム、アンソニー・マイラー、マット・フィリップス、ハンター・ポッター、メイソン・サルタレッリ、佐藤貢一、エリック・ショウ、ジェームズ・ウルマー、マーク・ウォーレン、エリック・ホワイト。
 
本展覧会に参加するほとんどが国際的なアーティスト・グループに属しており、その多くが日本のアートシーンに近しい人々にも馴染みのあるアーティストです。佐藤貢一、リッチ・ジェイコブス、河合美咲、アンソニー・マイラー、倉田裕也、マット・レイナスといったアーティストたちは、何度も日本で展覧会を開催しており、東京のコンテンポラリーのアートシーンではおなじみの顔ぶれとなっています。また、彼らは原宿や渋谷という街の文脈を汲み取りながら作品を発表することも多く、地球の反対側にあるそれぞれのコミュニティと私たちのコミュニティを結びつける役割を担ってきました。今回のグループ展に参加している、ローラ・ギル、ハンター・ポッター、エリック・ホワイト、ダン・マンデルバウム、ゴーシャ・レヴォチキンといったアーティストたちは、アメリカやヨーロッパでの展覧会に参加し知名度を広げてきましたが、東京で作品を発表するのは今回が初めてとなります。東京という都市は、国際的なアーティストやクリエイターにとって常に関心のある場所であり、この企画展は、彼らの仲間内で展覧会を開催したいという純粋でシンプルな願いから生まれました。:
 
「ここ数年、作家仲間の佐藤貢一さんと ”まわりの友人の作家たちと東京で展示とか出来たら楽しそうですね” なんてよく話をしていました。その週にたまたま集まった仲間達に興味あるかと聞いてみたら意外にも熱のこもった快諾がほとんどでした。」
– 倉田裕也
 
本展に参加するアーティストたちは、それぞれ個性的な芸術的アプローチとスタイルを持ち、幅広いテーマとコンセプトを探求してきました。それぞれの作家をグループ分けをする上で、当てはまるアイデアやテクニックはいくつもありますが、本展では包括的なテーマや統一したコンセプトを設定せず、代わりにコミュニティーの探求や、各アーティストが生活し作品を制作する様々な場所や文脈が、いかに独自の絆やつながりを作りネットワークを形成してきたかを示すものであるかという事ににフォーカスを当て紐解いていくもので、ニューヨークを中心とした世界の異なる地域の芸術的コミュニティの一部を紹介し、それぞれのアーティストを結びつけ、これまで培ってきた信頼関係を尊重しながら展覧会としてかたちにすることを目的としています。個人的に親しい友人から、友人の友人、指導者と指導者、生徒と教師の関係、さらには同じギャラリーでの共同作業や展示によって築いてきた繋がりまで、本展に参加する個々の間を横断する関係は、非常にさまざまな形を作り上げてきました。
 
本展は国際的なコンテンポラリーのアート・コミュニティの一部を構成している様々な人物たちの柔軟で相互に結びついた網の目にフォーカスを当てる機会であり、彼らの多くは同じ都市に住み、同じような世代で働き、それを形成するのに役立っている共有可能な部分、または並行する文脈を作品に落とし込んでいます。参加しているアーティストの大半はニューヨークを拠点に活動し、ブルックリンやクイーンズ地区で暮らし、時にはスタジオを共有しています。ニューヨーク在住でないアーティストたちは、かつてニューヨークで暮らし、現在はLAやマサチューセッツに移住、またはニューヨークを拠点とするアーティストたちと密接な繋がりがあり、韓国やデンマークといった遠く離れた地域まで、そのコミュニティは広がっています。地理的な距離と社会的な親和性の両面において、このような近接性が、国籍やアイデンティティの概念を超えたつながりや架け橋を築き、共同体としての意識を育むのに役立っているのです。
 
倉田をはじめ、現在海外に在住する日本人アーティストの多くにとって、この展覧会は、かつての故郷である東京で、また友人たち同士で展覧会を開催するという喜びを分かち合う機会であり、それによって大きな2つのコミュニティがひとつになるのです。また、倉田自身がアーティストの役割について考え、この展覧会に参加する一人一人がいかにしてアーティストという生き方を選んだのかについて問いかける機会でもあります。展覧会のタイトル「Needles and Pins(針とピン)」は、通常「Pins and Needles(針とピン)」という逆の順序で書かれる英語の慣用句に因んでいます。このフレーズは、神経への血液供給が絶たれたときに四肢に起こるピリピリ感やしびれ感を表しています。また、「期待や不安を抱きながら何かが起こるのを待っている」という感情状態を指すこともあります。状況によって、このピリピリした感覚はポジティブにもネガティブにもなり、アーティストが常に未知の世界に存在している状態の反映でもあり、間違いなく多くのアーティストがキャリアのどこかで経験することでもあると言えるのではないでしょうか。この20人の個性的なアーティストたちを結びつけているのは、作品を創作し、世に問うという常に切り離すことのできない根源的なテーマと共に制作をしてきたという部分であり、長年にわたり、時には浮き沈みを経て、アーティストとしての人生を追求しながら独自のコミュニティの一員となるために活動を続けるという意欲は、多くの人々に認知されるべきものであると言えるでしょう。
 
「全員の状況を詳しくは知らないが多くは他の仕事をかけもちしてやってる、またはやってきた人が大半だと思う。日中はアート運送業や美術教員、他の作家のアシスタント業または全くアートに関係ない仕事をしてきた人もいるかもしれない。中にはアーチスト業一本でやってる人もいるのだけど、どの様な状況であれ、アート制作の虫に一度取り憑かれてしまうとどうしてもやめられない中毒性があるのだと思う。言い方を変えればアートを長年制作し続けてる人は制作活動を(やめたくても)やめれなかった人達なのだと思う。うまくいく年そうでない年、どのジャンルもそうだと思うが安定なんてものはない。子供の様に制作に没頭し生活のためには、それを売らなくてはならない。売るというのはある意味、他者から認められなくてはいけない。ここで自分の狭い世界から出て厳しい批評の世界に入る。見透かされたり見当違いなことを言われたりはしょっちゅうあるがたまには褒められる事だってある。それを繰り返すうちに期待と不安を持ちながら作り続けてしまうのだ。そういう観点で”Needles and Pins”というタイトルはぴったりだと思った。」
 
– 倉田裕也、アーティスト、展覧会キュレーター
 
 
Anthony Miler, Land Is Witness, Oil and Acrylic on Canvas, 876 x 113 mm, 2023
 
PREVIEW DOWNLOAD