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Needles and Pins

16 March - 14 April 2024

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Needles and Pins

16 March - 14 April 2024

The Massではニューヨーク、ロサンゼルス、ソウル、コペンハーゲンをベースに活躍する国際的なアーティスト20名による展覧会「Needles and Pins」を開催いたします。
 
本展に参加するアーティスト: マーゴット・バード、ローラ・ギル、ジョーダン・イシップ、リッチ・ジェイコブス、アーロン・ジョンソン、河合美咲、倉田裕也、マット・レイナス、レイモンド・レムストラ、ゴーシャ・ラヴォチキン、ダン・マンデルバウム、アンソニー・マイラー、マット・フィリップス、ハンター・ポッター、メイソン・サルタレッリ、佐藤貢一、エリック・ショウ、ジェームズ・ウルマー、マーク・ウォーレン、エリック・ホワイト。
 
本展覧会に参加するほとんどが国際的なアーティスト・グループに属しており、その多くが日本のアートシーンに近しい人々にも馴染みのあるアーティストです。佐藤貢一、リッチ・ジェイコブス、河合美咲、アンソニー・マイラー、倉田裕也、マット・レイナスといったアーティストたちは、何度も日本で展覧会を開催しており、東京のコンテンポラリーのアートシーンではおなじみの顔ぶれとなっています。また、彼らは原宿や渋谷という街の文脈を汲み取りながら作品を発表することも多く、地球の反対側にあるそれぞれのコミュニティと私たちのコミュニティを結びつける役割を担ってきました。今回のグループ展に参加している、ローラ・ギル、ハンター・ポッター、エリック・ホワイト、ダン・マンデルバウム、ゴーシャ・レヴォチキンといったアーティストたちは、アメリカやヨーロッパでの展覧会に参加し知名度を広げてきましたが、東京で作品を発表するのは今回が初めてとなります。東京という都市は、国際的なアーティストやクリエイターにとって常に関心のある場所であり、この企画展は、彼らの仲間内で展覧会を開催したいという純粋でシンプルな願いから生まれました。:
 
「ここ数年、作家仲間の佐藤貢一さんと ”まわりの友人の作家たちと東京で展示とか出来たら楽しそうですね” なんてよく話をしていました。その週にたまたま集まった仲間達に興味あるかと聞いてみたら意外にも熱のこもった快諾がほとんどでした。」
– 倉田裕也
 
本展に参加するアーティストたちは、それぞれ個性的な芸術的アプローチとスタイルを持ち、幅広いテーマとコンセプトを探求してきました。それぞれの作家をグループ分けをする上で、当てはまるアイデアやテクニックはいくつもありますが、本展では包括的なテーマや統一したコンセプトを設定せず、代わりにコミュニティーの探求や、各アーティストが生活し作品を制作する様々な場所や文脈が、いかに独自の絆やつながりを作りネットワークを形成してきたかを示すものであるかという事ににフォーカスを当て紐解いていくもので、ニューヨークを中心とした世界の異なる地域の芸術的コミュニティの一部を紹介し、それぞれのアーティストを結びつけ、これまで培ってきた信頼関係を尊重しながら展覧会としてかたちにすることを目的としています。個人的に親しい友人から、友人の友人、指導者と指導者、生徒と教師の関係、さらには同じギャラリーでの共同作業や展示によって築いてきた繋がりまで、本展に参加する個々の間を横断する関係は、非常にさまざまな形を作り上げてきました。
 
本展は国際的なコンテンポラリーのアート・コミュニティの一部を構成している様々な人物たちの柔軟で相互に結びついた網の目にフォーカスを当てる機会であり、彼らの多くは同じ都市に住み、同じような世代で働き、それを形成するのに役立っている共有可能な部分、または並行する文脈を作品に落とし込んでいます。参加しているアーティストの大半はニューヨークを拠点に活動し、ブルックリンやクイーンズ地区で暮らし、時にはスタジオを共有しています。ニューヨーク在住でないアーティストたちは、かつてニューヨークで暮らし、現在はLAやマサチューセッツに移住、またはニューヨークを拠点とするアーティストたちと密接な繋がりがあり、韓国やデンマークといった遠く離れた地域まで、そのコミュニティは広がっています。地理的な距離と社会的な親和性の両面において、このような近接性が、国籍やアイデンティティの概念を超えたつながりや架け橋を築き、共同体としての意識を育むのに役立っているのです。
 
倉田をはじめ、現在海外に在住する日本人アーティストの多くにとって、この展覧会は、かつての故郷である東京で、また友人たち同士で展覧会を開催するという喜びを分かち合う機会であり、それによって大きな2つのコミュニティがひとつになるのです。また、倉田自身がアーティストの役割について考え、この展覧会に参加する一人一人がいかにしてアーティストという生き方を選んだのかについて問いかける機会でもあります。展覧会のタイトル「Needles and Pins(針とピン)」は、通常「Pins and Needles(針とピン)」という逆の順序で書かれる英語の慣用句に因んでいます。このフレーズは、神経への血液供給が絶たれたときに四肢に起こるピリピリ感やしびれ感を表しています。また、「期待や不安を抱きながら何かが起こるのを待っている」という感情状態を指すこともあります。状況によって、このピリピリした感覚はポジティブにもネガティブにもなり、アーティストが常に未知の世界に存在している状態の反映でもあり、間違いなく多くのアーティストがキャリアのどこかで経験することでもあると言えるのではないでしょうか。この20人の個性的なアーティストたちを結びつけているのは、作品を創作し、世に問うという常に切り離すことのできない根源的なテーマと共に制作をしてきたという部分であり、長年にわたり、時には浮き沈みを経て、アーティストとしての人生を追求しながら独自のコミュニティの一員となるために活動を続けるという意欲は、多くの人々に認知されるべきものであると言えるでしょう。
 
「全員の状況を詳しくは知らないが多くは他の仕事をかけもちしてやってる、またはやってきた人が大半だと思う。日中はアート運送業や美術教員、他の作家のアシスタント業または全くアートに関係ない仕事をしてきた人もいるかもしれない。中にはアーチスト業一本でやってる人もいるのだけど、どの様な状況であれ、アート制作の虫に一度取り憑かれてしまうとどうしてもやめられない中毒性があるのだと思う。言い方を変えればアートを長年制作し続けてる人は制作活動を(やめたくても)やめれなかった人達なのだと思う。うまくいく年そうでない年、どのジャンルもそうだと思うが安定なんてものはない。子供の様に制作に没頭し生活のためには、それを売らなくてはならない。売るというのはある意味、他者から認められなくてはいけない。ここで自分の狭い世界から出て厳しい批評の世界に入る。見透かされたり見当違いなことを言われたりはしょっちゅうあるがたまには褒められる事だってある。それを繰り返すうちに期待と不安を持ちながら作り続けてしまうのだ。そういう観点で”Needles and Pins”というタイトルはぴったりだと思った。」
 
– 倉田裕也、アーティスト、展覧会キュレーター
 
 
Eric White, Collusion: Deborah, Oil on Panel, 406 x 406 mm, 2018 Courtesy of Artist, The Mass and GRIMM,
Amsterdam | London | New York
 
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REVERBERATION

18 Nov - 26 Dec 2023, 6 Jan - 21 Jan 2024

【会期延長につきまして】
The Massにて開催中のNerhol ‘REVERBERATION’ 展はStandByでの公開制作、及びインスタレーション作品の新規展示に伴い、2024年1月6日(土)〜1月21日(日)まで会期を延長いたします。
年内は12月26日(火)まで開廊しておりますので、ぜひ多くの方々にご高覧いただけますと幸いです。
※12月25日(月)、12月26日(火)特別開廊
 
The MassではアーティストデュオNerhol(ネルホル)による新作展「REVERBERATION」を開催致します。 本展では近年Nerholの2人が継続的に取組んでいる帰化植物をテーマにしたシリーズを中心とした新作を発表致します。
飯田竜太と田中義久の2人からなるNerholは、主に彫刻を行う飯田と、支持体となる紙や平面的構成に向き合う田中、両者の行為の融合によって作品を制作しています。 Nerholは特定のモチーフの連続写真を何枚も物理的に積み重ね、それを彫刻し、出来上がった1つの作品によってそこに内包される重層的な時間と瞬間を語ります。そこに込められた時間や歴史の層に対し作品化するという彼らの試みは、他に類を見ない新しい物理的な形態と視覚的な美意識を纏い作品としてアウトプットされてきました。
 
本展にてNerholが発表する作品群のテーマとなっている帰化植物とは、本来の自生地から人間活動を含む様々な要因によって他の地域へ運ばれ、やがてその土地で野生化した植物のことを指します。
そこにはその植物やその植物を運んだ何か、またはその因果を作った人間の活動の歴史が存在しますが、まさにそこに介在する時間や歴史という概念こそNerhol作品に通底する欠かせないコンセプトです。
Nerholはどの作品においてもそういった時間の集積を紙の束に置き換え、彫刻をすることでそこに内包される「何か」を露わにしてきました。
画面には飯田の身体性と田中の思考性が伴われ、それらは2人が繰り返し行う「対話」という行為によってその密度を高めてきたと言えます。
言わばNerholの2人にとって「対話」という行為は既に作品制作の一部であり、むしろその中枢とすら言えるのです。
 
本展で発表される帰化植物作品はNerholが近年制作を続けてきたシリーズの1つであり、私たちが普段何気なく目にするものを再び意識させ、そこに向き合う時間を与えてくれる作品群となるでしょう。
私たちとは全く異なった時間軸の中で歴史的に生き残ってきた帰化植物は生命力と環境への適応力に溢れ、逞しさと美しさを湛えています。
 
写真でもあり、彫刻でもある。
瞬間でもあり、歴史でもある。
それらの要素のあわいに存在するNerhol作品は、様々な問いと挑戦に溢れ、普遍的なテーマを扱いながらも常に新しい表現を求めてきました。
それは美術の本質に迫る行為そのものであると言えるでしょう。
柔軟性や多様性、他者への理解が必要とされる対話という行為を繰り返しながら作品を生み出していくその形式こそがNerholのアートであり、現代社会においてそのような芸術活動が重要な行為であるように思えてなりません。
 
NERHOL
 
Nerhol(ネルホル)は、飯田竜太と田中義久の二人からなるアーティストデュオ。それぞれの活動を展開していた二人は、現代においていかにして問題を提起し、人に伝えていくかという方法論において共通項を見出し、2007年よりNerholとして活動を開始する。書物やそこに印された文字、世界に存在する図像の定型を異化するような探求にはじまり、2011年からは数分間かけて200カット以上撮影をした全て異なるポートレートを束ねて彫刻することで生み出される歪んだ人物像の立体作品を発表し、大きな注目を集める。その後、国内外の美術館やギャラリーの展覧会への参加を重ねるなか、街路樹、動物、水、あるいはネット空間にアップされた画像データや記録映像等、様々なモチーフを選びながら、それらが孕む時間軸さえ歪ませるような作品を制作。そこでは一貫して、私たちが日常生活を過ごすときには見落とされがちな有機物が孕む多層的な存在態を解き明かすことを試みている。
主な個展に「Affect」(第一生命ギャラリー / M5 Gallery、東京、2023年)、「critical plane」(Yutaka Kikutake Gallery、東京、2021年)、「Interview Portrait House and Room」(Youngeun Museum of Contemporary Art、韓国、2017年)、「Promenade」(金沢21世紀美術館、石川、2016年)、「Index」(Foam Museum、アムステルダム、2015年)など。主なグループ展に「第八次椿会 ツバキカイ8このあたらしい世界 / このあたらしい世界 2nd SEASON “QUEST”」(資生堂ギャラリー、東京、2021年 / 2022 年)、「New Photographic Objects 写真と映像の物質性」(埼玉県立近代美術館、2020年)、「VOCA展2020 現代美術の展望ー新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、2020年)、「めぐるりアート静岡」(静岡市美術館、2017年)など。主な受賞歴にVOCA賞(2020年)がある。
飯田は、1981年静岡県生まれ。2004年日本大学芸術学部美術学科彫刻コースを卒業、2014年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術専攻修了。現在は東京を拠点にしている。田中は、1980年静岡県生まれ。2004年武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科を卒業後、現在は慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程在学中。東京を拠点に活動を続ける。
 
※2023年12月25日(月)、12月26日(火)は特別開廊
©︎Nerhol, Courtesy of artist and The Mass
 
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John Pawson

14 April - 14 May 2023

ロンドンを拠点に活動し、世界で広く認知されている建築家、ジョン・ポーソン。ミニマリズムを継承し、ネオ・ミニマリズムの新しい考察を著した「Minimum」(Phaidon Press, 1996) の中でアート・建築・デザインの分野において自身のスタイルを極限まで論考し、近年は写真家としても国際的にその知名度を高めています。 写真家としての作品をまとめた書籍として「A Visual Inventory」(Phaidon Press, 2012)、 その5年後に「Spectrum」(Phaidon Press, 2017)を出版し、美術史家のキャリー・ス コットがキュレーションをした、ロンドンの中心部にある180 The Strandでのグループ展で建築的なインスタレーション作品が公開されました。2021年にはヴェネチア・ビエンナーレ第59回国際美術展の期間中、Casa Dei Tre Ociにて「John Pawson – A Point of View」 を開催、2022年には自身が設計したベルリンのBastian Galleryで、16点の新作を展示した 「John Pawson, Looking for Light」を開催しました。
 
「私にとってカメラは、創造的なプロセスにおいて不可欠なものです。他の人がスケッチブックを使って描き留めるように、レンズを通して自分が物事や景色をどのように見ているのかを記録する重要な手段なのです。」- ジョン・ポーソン
 
日本での初個展となる本展では、色彩、テクスチャー、構図といった細部から、光、空 気、人間の感情へと焦点を移し、ポーソンの世界に対する独自の視点を体験することができる構成になっています。The Massの3つのギャラリースペースと、隣接するStandByの半屋外のエリアに分かれ、The Mass Room 02, 03では、「Spectrum」のシリーズからセレクトされた作品を展示します。色調毎に並べられたイメージはポーソンの建築的観点からアプローチされる内容になっており、空間と作品の両方の視点から鑑賞することができます。Room 01では、被写体が彼自身の生活環境そのものである「Home」シリーズを発表いたします。この写真作品と対をなすように、原宿のキャットストリートに隣接して設計されたインスタレーションスペース StandByでは今回の展示のために制作された瞑想的な立体作品が展示されます。40年以上のキャリアを通して、ポーソンは自分の作品はアートではなく建築であるという考えを貫いてきました。三日月形の形状から 「Lunula」と名付けられたこの作品で、彼は意識的に’アート’と’建築’その区別の限界に 近づき、空間、表層、光、香り全てをシームレスに体験できる、唯一無二の滞在可能な作品を造り出しました。
 
20代半ばに名古屋で英語教師をしていたポーソンは、その後東京に移り住み、著名な建築家・デザイナーの倉俣史朗氏のスタジオを頻繁に訪れていました。本展はある種の帰郷のようなもので、当時の日本での経験や倉俣氏との出会いは、若き日のポーソンに強烈な印象を残し、建築、写真、デザインなど多方面にわたるキャリアに繋がるきっかけになったと言えます。
 
本展覧会に合わせ、ジョン・ポーソン氏と日本の現代美術家である杉本博司氏による トークイベントを開催いたします。本トークは、展覧会キュレーターのキャリー・スコットが進行役として参加し、両者の人生や様々な分野での仕事について語り合うまたとない機会となります。イベントの開催は4月14日(金)夕方を予定しておりますが、 The Mass内の特設会場の関係で当日は席確保が少数になる可能性がございます。そのため完全予約制、当日参加は不可とさせていただきます。本イベントの詳細(開始時間、予約方法)は、The Massのウェブサイト、またはソーシャルメディアを通じて随時更新予定でおりますので、ご確認ください。
 
 
ジョン・ポーソン(John Pawson) CBE, RDI
建築家。1949年 イングランド北部のヨークシャー地方ハリファクス生まれ。 家業のテキスタイル製造の仕事に従事した後に来日、日本では名古屋で英語教師として働き、数年間滞在。東京に移り住んだ後、イギリスへ帰国し、ロンドンの建築の名門で あるAAスクールで建築を学び、81年に独立。余分な装飾を排したミニマルな美学で認知度を広め、自邸のほか、アパートメント、店舗、ホテル、修道院、バレエセット、アー トギャラリーなど数多くの建築設計を手掛ける。 主なプロジェクトに、デザインミュージアム(ロンドン)、バスチアン・ギャラリー(ベルリン)、ノヴィー・ドゥール聖母修道院(ボヘミア)、ジル・サンダー表参道旗艦店 (東京)などがある。


 
John Pawson, Spectrum, 2019, Courtesy of the artist
Photograph: Keishin Horikoshi / SS
 
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Summer Hours

27 August - 25 September 2022

The Massでは2022年8月27日から9月25日まで倉田裕也 個展「Summer Hours」を開催いたします。
日本では3年ぶりの開催となる本展では、新作キャンバス作品18点を発表いたします。
 
身近な日常の風景を描く倉田の作品は、その素朴な光や一瞬の光景、言葉では例えられない内面的な感情を絵画に浸透させ、’今しか描けないもの’ を表現しています。
本展覧会のタイトル、「Summer Hours」という言葉の通り、夏の明るく眩しいほどの陽の光や、大きな木々から降り注ぐ木漏れ日、はしゃぐ子供たち、水面に映る景色は高く広がる空をも反射させ、満月の月明かりは柔らかくあたり一面を照らしています。倉田の作品に登場する人物たちの表情はあえて単純化されており、デフォルメを用いたその自由な描写によってより馴染み深く、キャンバス一面に広がるユーモラスな絵画世界へ私たちを誘います。
 
世界中を混乱させたCOVID-19のパンデミック以降、自然の中で家族と過ごす時間が多くなる中で、身近な景色を被写体とし自身が撮影をした写真をベースにドローイングを描き起こし、以前のフリーハンドで描くスタイルから徐々に変化を遂げ、キャンバスに落とし込む現在の表現にたどり着いています。色彩豊かな表現は、一見水彩画やクレパス画のようにも見受けられます。油彩による丁寧な筆のタッチと自身のニューヨークでの日常生活の様々な場面からインスピレーションを受け描く構図は時に漫画的であり、日記を綴るように描いてきました。
 
日本を離れ、23年間ニューヨークを拠点に活動している倉田は、その傍らで2007年から15年間絵画修復のスタジオで様々な絵画技法を取得しながら働いてきました。アメリカのアートシーンの移り変わりを見続け、アーティスト同士のコミュニティーやアートに携わる人も数多く生活する環境で、制作活動を続けるにはとても便利な都市だと倉田は言います。環境やコンセプトは出来るだけ固定せず制作に挑み、常に柔軟に自身と向き合いながら描いてみたいものを描いてきた倉田の自由で個性的なスタイルは、作風に変化は見られるものの一貫して身近な存在を観察し、マスメディアや大衆文化と対極に潜む内面的な魅力や豊かな感性から見出される景色を独自の目線で解釈し、自身の制作の中で常に探究を続けているものと言えます。
 
倉田 裕也(くらた・ひろや)
1980年 大阪府生まれ。2003年にパーソンズ美術大学を卒業し、約23年間ニューヨークを拠点に制作を続けている。近年の展覧会では、Ross + Kramer Gallery(ニューヨーク、2018)、Monya Rowe Gallery(ニューヨーク、2019)、Over The Influence(香港、2021)での個展をはじめ、SPRING/BREAK Art Show(ニューヨーク、2019)での展示に参加している。日本での展覧会は、Destroy Your Habits(東京、2021)でのKoichi Satoとの2人展、PARCEL(東京、2021)でのグループ展に参加。個展としてはKOKI ARTS(東京、2019)での展覧会以降、約3年ぶりの開催となる。 
Image: Close Encounter, 183 x 147.8 x 4cm, Oil on Canvas, 2022
 
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Room Service

MAY 28 - JUNE 26 2022

The Massは、5月28日よりサム・フリードマンの個展「ルーム・サービス」を開催します。本展は、日本での初個展となり、現在制作中の「Cave Paintings」シリーズから、すべて新作のキャンバス作品を発表します。
 
滑らかで流れるようなラインの繊細さと色彩のグラデーションが特徴的なフリードマンの作品は、キャンバスの表面上で抽象的なフォルムのハーモニーを奏でています。形式的な美学を根源とした絵画アプローチを続けるフリードマンのキャンバスは、自然界に見られる有機的な要素や質感を反映した抽象的な作品となっており、自身が住んでいるニューヨーク州北部の自然の風景にもインスピレーションを受け、作品が展開するにつれて常に画面上でのアプローチを変え、彼の頭の中にあるイメージをキャンバスに描き出す試みを続けています。多くの場合、複数のキャンバス制作を同時進行し、同じようなアイデアを持つ作品の反復や一貫してのストーリーを繰り返しながら、彼が何度でも作品に対峙し考察することができるというコンセプトの上でそれらは成り立ち、ユニークな表現となって立ち現れているものと言えます。フリードマンは、自身の絵画制作のプロセスと同様に、時間や直線的なものが持つ概念に抵抗しています。Cave Paintingsシリーズは、彼の初期の具象作品の中で生まれ、抽象化との反復の中で継続し、そのスタイルを確立してきました。その後の展示の度にフリードマンのプロセスの微妙な変化を見ることができ、彼の実践の継続的な特質により、これらの変化は抽象と表現の間を循環的に行き来し、方法論的、反復的でありながら、自由で自発的なものとなっているのです。このプロセスについてフリードマンは、自分の作品はある地点から始まり、そこからアイディアの成長に合わせて構築・調整をしていきますが、しばしば 「絵画が(自分自身を)支配するようになる」と言葉に残しています。フリードマンにとって、このプロセスを受け入れ、作品に自らの方向性を見出させることが、好奇心と無限の可能性に満ちたイメージを創り出すことを可能にするのです。
 
フリードマンの作品は、クリフォード・スティルやバーネット・ニューマンといったアメリカの抽象表現主義の画家の伝統を受け継いでいますが、彼の参照するポイントははるかに幅広く、具象画や風景画、日本の木版画にも目を向けているものといえます。フリードマンの作品をよく見ると、色彩のグラデーションは区切られた線から形成され、互いにシームレスに移行していることがわかります。その線と形は、地図上の等高線や枯山水の砂紋を連想させます。枯山水とフリードマンのペインティングにはある種の類似性があり、どちらも周囲の自然風景の本質を捉え、絵を描くという繰り返しの行為が石庭の砂利を砂熊手を使いかき分ける行為と同等の瞑想空間を作り出しています。色彩の反復と層の構築のサイクルによって、描くという行為が第二の自然の姿となり本能的なものになるのです。そのため、彼の技術への献身さと頭の中のイメージを再現する必要性そのものが、絵肌に宿る神聖な純粋さをより一層見る側へ響かせるものとなるのです。
 
本展では、大型の円形キャンバスを含む大作を展示し、彼の絵画制作の循環的な性質と同様に、複数のキャンバスに描かれた小さなスケールの連作も公開いたします。この機会にぜひ作品の静謐さとフリードマンの描く心象風景の具現化をご高覧いただければ幸いです。
 
サム・フリードマン(SAM FRIEDMAN)
1984年ニューヨーク州オネオンタ生まれ。
ニューヨーク州北部、プレザントバレー在住。
ニューヨークのPratt Art Instituteでイラストレーションとタイポグラフィーを学ぶ。
卒業後、様々な仕事を経て、アーティストKAWS.のスタジオ・マネージャーとなる。その後、単独で活動を開始し、これまでに米国、ヨーロッパ、アジアで展覧会を開催している。
 
 
Courtesy of the Artist and Library Street Collective

 
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INDEX#5

FEBRUARY 5 - FEBRUARY 27 2022

開館時間 12:00 – 19:00
閉館日 月曜日・火曜日
入館料 無料
 
The Mass では 2022 年 2 月 5 日(土)から 2 月 27 日(日)まで、西 祐佳里 個展「INDEX #5」を開催いたします。
 
西 祐佳里の作品は、自身が撮り溜めた写真や古い雑誌の切り抜き、インターネット上の画像などから採取した素材を ストックし、下絵としてそれらをデジタルコラージュしたものを、アクリル絵具を使いキャンバスに描き起こしています。 コラージュを絵画として表現するといった発想から現在に至る西のスタイルは、コラージュが持つ一種の心理療法的な側面も 内包しており、自身を投影した最新の記録(Record)と内的な世界を行き来する修練を繰り返しながら筆を使い、オリジナルの技法で制作を続けてきました。
 
本展が初の発表となる大型キャンバスの作品をはじめとする新作では、コラージュの世界観を超越し、どこまでも広が る空や、緑が青々と茂る草原、芝生、そしてどれも名前を持たない、正体不明の未知の生き物を混在させた大胆な構図は、 鮮やかな色で描かれるモチーフと解像度の異なるイメージを配置することにより、その違和感や陰影をより強烈に描き出し、 コラージュと映像といった異なるメディアの質感を絵画の技法を用いて見事に融合させ、表現しています。80 年代の SF や ホラー映画に登場するモンスター、原始的なクリーチャー達の印象がモチーフの源流となっており、作品の視覚的な ストーリーが訴えかける、どこか不穏でありユーモラスな絵画世界は、西の原体験を持って大きく影響しているものと言え ます。 また、近年の情勢から、西自身が内向的に家族と過ごす日々の中で生まれた作品も多く、例えば、手づかみで食べる機会の多い ハンバーガーの隣に消毒液が置いてあるものや、外気から身を守ろうと防護ヘルメットを被っている少女がいたり、これまで 意識してこなかった当たり前の日常へ問いかける場面も多様に描かれ、時代を反映するモチーフも数多く登場します。
 
西の作品で特徴的な、光の方向が生み出す違和感や、顔のない人物、感情不在のぬいぐるみ、平静な動物たち。現実と虚構を 混在させる架空の構図は常に不条理であり、日常世界の歪みを独自の表現で描き、見るものにその意味を深く訴えかけます。 コラージュへの考察から派生する様々な解釈は未知なる可能性を広げ、それらの変換として自身の絵画表現の具現化を試み ています。本展では、The Mass Room 02 にて西の作品世界を等身大のスケールで再現した空間インスタレーションと映 像作品も公開いたします。
西 祐佳里は京都芸術大学(元・京都造形芸術大学)デザイン学科を卒業後、絵画技法を独学で学び、培ってきた構成技術
や造詣を生かしながら現在の絵画スタイルに行きつき、制作を続けています。近年では 2021 年に開催された「VIEWING」 (SAI)の出展も記憶に新しく、国内外で注目を浴びています。
 
 
西 祐佳里(にし・ゆかり)
1978 年香川県生まれ。兵庫県在住。京都芸術大学(元・京都造形芸術大学)を卒業後、2004 年から国内外のギャラリーやアー トフェアにて絵画やミクストメディア作品を発表。西のアクリル画に見られるシュールレアリスム表現は、深い造詣と視覚 的なストーリーによりそのノスタルジックであり奇妙で幻想的な世界感を描き出している。日本の音楽シーンでも活躍の場 を広げ、CD ジャケットのデザイン、ポスター、ツアーグッズ、ミュージックビデオや映像作品の制作など、ミュージシャ ンとのコラボレーションも実現している。

 
Untitled Scene: K, 2021 Acrylic on Fabric 728 × 1,030 x 30mm @Yukari Nishi, The Mass

 
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TIDE ‘BLOOM’

NOV 27 - DEC 26 2021

開館時間 12:00 – 19:00
閉館日 月曜日・火曜日
入館料 無料
 
 The Massでは、2021年11月27日(土)から12月26日(日)まで、東京を拠点に活動するアーティスト TIDEによる個展「BLOOM」を開催いたします。本展は、2020年にGallery COMMONで開催した「DEBUT」展に続く2度目の個展となり、継続して制作している「CAT」シリーズをはじめ、「Life is Flat」と題された新しいペインティング・シリーズを含む最新作19点、TIDEの芸術活動の新たな始まりを示す立体的なインスタレーションを発表いたします。
 
 本展のタイトル「BLOOM」は、TIDEの作品に登場する花のイメージを意味すると同時に、アーティストとしてのTIDEのアイデンティティを表すメタファーでもあります。一つの絵画上に現れる多様なスタイルは複雑さとディテールに満ちたものへと進化し、その絵画技術は短期間で大きく躍進しています。このタイトルは、TIDEがさらなる芸術的挑戦のために成長し、進化していくことを意味しています。
2019年から制作を続ける「CAT」シリーズに登場する猫をモチーフとしたキャラクターは、おもちゃに命を吹き込んだかのような存在として描かれ、幼い頃に憧れた空想世界を実現させながら、自身のキャリアとともに洗練され、成長してきました。また、ベースとなっている背景の表現からは、幼少期の記憶を辿り再び立ち現れた寝室の光景や夜の景色を具現化したものと見て捉えることができ、過去と現在の感情や情緒を携えています。ノスタルジアをテーマとし探求するTIDEの作品は、キャラクターと背景に相反する要素を混在させることで、その世界観を確立させています。また、作品に繰り返し登場する大きく広がるカーテンや柔らかな家具、内的世界と外的世界をつなぐ役割を持つ窓は、自身の心象風景を表しており、総じて絵という画面に構築された記憶の痕跡と解釈することができます。
 
 モノクロームで描かれた世界は、一見シンプルですが、よく見ると背景と前景を区別するための技法や絵画スタイルが複雑に重ねられています。作品のキャラクターはフラットな二次元で表現され、背景はアクリルとスプレーを用いて立体的な室内を描いており、生物と無生物、現実と空想、二次元と三次元の境界を確認することができます。本展では、二次元と三次元の相互作用を追求した表現として、猫のキャラクターを象ったシェイプドキャンバスを携えた3つの大作を新たに加え、平面上で繰り広げられる漫画のようなイメージを、絵画の文脈に添ったアプローチで彫刻的な要素も含め表現しています。
 
 新たなシリーズとなる「Life is Flat」は、「CAT」シリーズと同じ世界に存在するTIDE独自のモノクロームのスタイルとテクニックを継承した作品です。「Life is Flat」は、静物画の様式を再解釈したもので、それぞれの作品には器や花瓶に入る様々な花束が描かれています。TIDEの絵画世界のルールに従い、生き物である花は二次元で描かれ、生き物ではない花瓶は三次元で存在し、静物画の典型的な模倣という表現方法を覆しています。また、花はハルクやE.T.などの有名キャラクターの形をした花瓶に活けてあり、繊細な花のイメージと怪獣やエイリアンのモチーフが並置されています。1980年代の映画やテレビに登場するこれらのキャラクターを使用することで、子供時代やノスタルジアのテーマをさらに拡大し、ポップカルチャーの普遍的な要素を私たちが持っている共通意識に芽生えさせ、結実させているものと言えます。
 
TIDE
1984年静岡県生まれ。現在は東京を拠点に活動をしている。20代前半に滞在していたオーストラリアで漫画家・歴史家の水木しげる氏の作品に出会い、独学で絵を描き始める。2009年に東京に戻り、アーティストとしての活動を本格的にスタート。当初は点描画をはじめとした鉛筆画を中心に制作をしており、一貫してモノクロームの世界を描き続けてきた。以降、表現力の高い絵画的アプローチに目覚め、スケール感のあるキャンバス上での実験を続けながら、水彩絵の具やアクリル絵の具などを使用した新しい技法を模索し、徐々にレパートリーを増やし現在のスタイルに至っている。TIDEの作品は1930年代から1950年代の古いハリウッド映画やアニメーションにも多大な影響を受けており、一つのキャンバス上で2次元と3次元のモチーフを組み合わせながら、子供時代の原風景やノスタルジアといった普遍的なテーマを混在させ、独自の絵画世界を確立している。近年では、韓国や香港、ニューヨーク、ロンドン、ドバイでのグループ展に参加したほか、来年以降、海外での初個展も予定されている。本展は2020年に開催された「DEBUT」展(Gallery COMMON・東京)以降2年ぶり、2度目の大規模な個展となる。
 
 
VOYAGE, 2021 Acrylic on Canvas 2,273×1,818mm ©︎TIDE, The Mass
 
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I CARE BECAUSE YOU DO

MAY 29 - JUNE 27 2021

開館時間 12:00 – 19:00
閉館日 火曜日・水曜日
入館料 無料
 
Curated by The Mass x Matt Black
 
The Massは、ニューヨークを拠点とするキュレーター、マット・ブラック氏との共同企画にて、15名の国際的なアーティストによる展覧会「I Care Because You Do」を開催いたします。20世紀末から現代に至るまで、様々なアーティストがミニマリズム、コンセプチュアリズム、ポスト抽象表現主義の成り立ちを明確にし、触発され、時には破壊し、その複雑な光景・環境を反映した作品を数多く生み出してきました。本展は、15名のアーティストの独自の目線で今日までの時代背景に改めて寄り添い、表現の方法とは何かを探る展覧会となります。
 
©︎Courtesy of the artist and Tennis Elbow at The Journal Gallery, New York, New York.
 
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ささやかな叫び

NOVEMBER 21 - DECEMBER 27 2020

開館時間 12:00 – 19:00
閉館日 火曜日・水曜日
入館料 無料
 
ささやかな叫び A Modest Scream
 
The Massは、11月21日(土)から12月27日(日)まで、soh souen(ソー・ソウエン)の個展「ささやかな叫び A Modest Scream」を開催いたします。
本展は桑園 創(くわぞの はじめ)の名義から一新したsoh souenによる最初の展覧会となります。 2019年から制作を続けているポートレート作品「tie」、抽象表現によるパステル作品「etude」、 「caress and hug」と立体作品「my body, your smell, and ours」を発表いたします。この機会に soh souenの最新作をぜひご高覧ください。
 
抽象表現による作品は、顔料や土を混ぜ自作のパス テルを作り、自身の手で直接紙に描いています。呼吸をするようになぞりながら絵肌と対話をし、 徐々に浮かび上がる色面からは静かに湧き上がる内なるエネルギーを感じさせます。通常、パステル 絵画などは経年劣化を考慮し最終的に定着材などを使うことが多いとされる中、souenはあえて顔料 を紙面に定着させず、永遠に触れられる媒体として向き合い、より身体性を画面に求めながら現在の 表現方法に辿り着き、結実させています。本展ではパステル作品と合わせ、治癒や浄化を元に採取さ れた25種類のハーブと香木を配したインスタレーション展示にて身体をイメージした立体作品「my body, your smell, and ours」の新作も発表いたします。
 
本展に合わせ、展覧会カタログの刊行を予定しております。
 
soh souen(ソー・ソウエン)は1995年福岡生まれ。大学在学中から一貫して身体、わたし、他者などア イデンティティーを軸に、身体を有する存在として現代における絵画制作の探究を続け、初期作品である 「body to body」を経て、本展で発表する「tie」、「caress and hug」へと自身の表現領域を広げてい る。The Massでの展示は2018年に開催されたグループ展「PORTRAIT」への参加以降、2回目の展示に して初の個展となる。

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GENERATION Z

NOVEMBER 16 - DECEMBER 15, 2019

開館時間 12:00 – 19:00

閉館日 火曜日・水曜日

入館料 無料
 
from COMMAND Z to GENERATION Z
 
‘およそ20年前のコマンドZの展覧会が開催されたのは2000年の始めであり、その時代にジェネレーションZが生まれる。’ フューチュラは自分自身の過去を振り返る事と同時に、未来を見る事も大事だと思っていると話し、制作について次のように語っています。「グラフィティは自分の存在意義を確認するためのものだった。自分の名前を世界中に知らしめたかった。名を轟かせたかったんだ。ただ諦めずに創り続けること。立ち止まらず、ひたすらに創り続けるんだ。」
 
約20年ぶりに日本で開催される本展覧会では、4つの異なる彫刻作品や、2019年の日本滞在中に制作された27点のコミッションワークを展示いたします。本展覧会では、フューチュラの息子であり13th Witnessの名で知られるフォトグラファー、ティモシー・マクガーの作品も展示予定となっており、親子での合同展示は初の試みとなります。
 
Futura:
グラフィティというものが公のアートギャラリーに認められ始めた時代のパイオニアであるアーティスト、フューチュラ 2000(本名:レナード・ヒルトン・マクガー)は1970年代後半に早くもグラフィティにおいて革新的なアプローチ、すなわちそれ以前はレター(文字)を基本としたルールが存在していたのに対して、アブストラクトなスタイルを世の中に示した事で知られています。彼のキャンバス作品は1980年代に注目を浴び、ジャン=ミシェル・バスキア、キース・ヘリング、そしてケニー・シャーフとともに大きなアートムーブメントの立役者となりました。彼は『サブウェイ・スクール』と呼ばれるニューヨークの地下鉄グラフィティシーンにおいてグラフィティを全て独学で覚え、彼の熟達した色彩感覚、幾何学的な構成、そして線はワシリー・カディンスキーの作品にたとえられています。そして、彼の友人でもあるドンディ・ホワイトやラメルジーとならび革新的で最新のダイナミズムを表現する作家として称えられています。

 
© Futura, SPRAYMASTERZ, 2019 
(164 × 227.3 × 4.8 cm)

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Mimesis

JUNE 29 - JULY 28, 2019

開館時間 12:00 – 19:00

閉館日 火曜日・水曜日

入館料 無料
 
The Massではセブ・ジャニアックによる日本初個展を開催いたします。
 
30年以上にも及ぶ写真家としてのキャリアを通して、セブ・ジャニアックは驚くほど多彩な領域を探求してきました。革新的な技術と独特な視点が際立つマット・ペイントのシリーズ以降、写真が持つあらゆる可能性を取り入れながら、見事な調和が作品におとしこまれています。フリーランスのグラフィックデザイナーとして活動を始めた若き⽇のジャニアックは、アーティストになろうという明確な意思を持っていたわけではありませんでした。好奇心の赴くままに制作をし、偶然に出会ったカメラで実験的に制作を続けたことが、数々の作品を生み出すきっかけとなりました。
 
1987年になると、テレビや映画制作の現場ではQuantel社のPaintboxの使用により、イメージ生成やデジタル加工が可能になりました。ジャニアックはこれらの本来の⽤途を超えた技術を用いた第一人者の一人です。彼のとめどない空想の世界に、これまでにないリアリティさを組み込み創られた作品は、写真美学に新たなの価値をもたらしました。様々な国で撮影されたイメージがデジタル技術により、大判サイズのフィルムにまとめ上げられています。圧倒的な透明感を放つSFの世界が創り上げられており、この新たな作品スタイルは、セブの作品を皮切りに、その後20年間で主流なスタイルとなりました。
 
セブ・ジャニアックは、アーティストとして作品を創り続けることで世の中に示唆して行きたいという絶え間ない欲求を持つパイオニアとして、世の中を観察し、挑み続けています。現実を理解する手助けとなるもの、新たな視点のきっかけとなるもの、意味を生み出すものへ強い渇望を持っています。彼は、確立されている現象(特に宗教、科学、天体物理学)であろうと、ニッチな領域(秘教やUFO研究)であろうと、彼の想像力は時間や場所を超越して、多様性を持つ⼈类を対象としています。
 
初期のデジタル写真作品で成功を収めたジャニアックは、1995年には広告の世界で一躍時の人となります。写真からビデオへとそのスタイルを移⾏させると、すぐに著名なミュージシャンたちから声がかかり、ダフト・パンク、ジャネット・ジャクソン、ロビー・ウィリアムスらのミュージック・ビデオを手掛けることになりました。
 
その後の10年にも及ぶ多忙を極めた生活により2015年に体調を著しく崩したジャニアックは、大幅なライフタイルの変更を余儀なくされました。そして、委託制作から一線を退くことを選択し、再び初期の作品制作に立ち返り、新たな写真作品におけるスタイルを追求することになりました。「チベット死者の書」などの伝統的な東洋の文献や西洋美術史などの様々な文脈からインスピレーションを得て制作を続け、自然やアイディアを表現したアンサンブル作品を作り出しています。
 
2009年以降、ジャニアックは自身の新たな挑戦として、二重露出、スーパーインポーズ(映像に画像や⽂字などを合成する技術)、フォトモンタージュ(合成写真)といったアナログ写真の技法に制限しながら探求を続けています。
 
―Paul Frèches(ギャラリスト、キュレーターを経て、現在は在上海フランス総領事館所属⽂化担当官)
 
 
Mimesis (2012- 2014)
 
擬態(Mimesis)とは、模倣することにより対象を表現する⽅法であり、基となるモデル、擬態者、受信者の3種の間で起こる複雑な相互作用を通じて進化するメカニズムです。
 
喰うか喰われるか! ⾃然界のこの基本法則において、動物たちは進化の過程で様々な⽣存⽅法を獲得してきました。その一つが擬態です。
 
専⾨的に擬態という⾔葉の意味は、動物学的に関係性が離れた2種類の⽣物の類似性(⼀方が擬態者として他⽅(モデル)の真似をする)に限定されます。しかしこの⾔葉は、天敵や⼈間から⽣物が身を隠す際のカモフラージュの意でもあります。
 
厳密には、同色性、同型性、カモフラージュ、擬態は、生物が天敵から隠れるために⾏う基本的な4つの動作であり、擬態とは様々な⾔葉、動作、形態の要素が関与する⽣存戦略なのです。
 
被⻝者は危機にさらされると、毒、悪臭、逃避、隠蔽を⽤いてその状況に反応します。これらの絶妙なバランスにより保たれた動物の生への渇望は、隠蔽やカモフラージュという様な反応で現れ、それらの生存を確かなものとするための⼀つの手段なのです。彼らとカモフラージュや擬態の関係を考えると、そこには人間がするような努⼒や論理形成は⾒受けられません。それはあくまでも説明のつかない環境への順応なのです。
 
注: ポストプロダクションによる、色補正、レタッチ処理、特殊効果などの加工はしていません。2009年より、ジャニアックはこの探求に新たな条件を設け、1850年以来使⽤されているアナログ写真の技術のみでの制作を行っています。具体的には、写真のパイオニアであるヘンリー・ピーチ・ロビンソン、エドゥアール・バル デュス、ギュスターヴ・ル・グレイなどに着想を得た⼆重露光、重ね焼き、フォトモンタージュなどです。
 
© Seb Janiak, Mimesis, Aphyllae Maleakht, 2014

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12 TITLES

FEBRUARY 9 - MARCH 10, 2019

開館時間 12:00 – 19:00
閉館日 火曜日・水曜日
入館料 無料
 
The MassではToluca Éditionsを開催いたします。
 
写真のタイムカプセル
 
1860年代に日本中に普及した写真館では、ダゲレオタイプそして湿板というかたちで主に肖像写真が撮影されていた。1848年、のちの薩摩藩藩主である島津斉彬によって写真機が日本に輸入されて以来、各地に定められた開港場を通じて写真を含む西洋の技術が日本の近代化を支えることになる。日本における写真機の使用目的は主に肖像と風景の撮影であり、その点では西洋と同様だが、輸入されたばかりの写真技術は日本固有の活用方法をもって全国に普及する。その文化的差異は、現存する湿板写真に窺える。西洋で撮影された湿板は金色の額縁に収められていたのに対し、日本で製作された湿板は檜製の共箱に安置されていた。その箱には撮影日と被写体の名前が墨で記載されていた。写真の私的な鑑賞を促すこの工芸的な保存方法は日本においても、写真プリント(鶏卵紙そしてゼラチンシルバー·プリント)の普及とともに失われ、それに取って代わるかたちで「写真アルバム」が新たな定型となった。写真アルバムという個人的な編集物はさらに、写真印刷技術の発展と共に「写真集」に押しのけられた。二十世紀の視覚文化において写真を中心的な存在として据えるうえで多大な影響を与えた写真集は、「書籍」というフォーマットをもって写真とテキスト(文芸と理論)の関係性をより強固なものにした。デジタル·ポートフォリオが主流となった、非物質化した写真の現在において、手書きで記載された共箱に収められたガラス板写真は化石のような存在である。
そのなかでトルーカ出版は十五年前から、豪華にして妥協のない写真出版事業を通じて、写真というモノを革新しながら現代的な存在として維持し続けてきた。デジタル画像の氾濫によって写真集というフォーマット自体が危機的状況に晒されている現在、トルーカ出版は、箱入り写真と写真集との中間点に位置する、独創的な写真オブジェを製作し続けている。その製作方針はシンプルでありながらユニークである。トルーカ出版の出版物とは、特製ケースにテキストおよびオリジナル写真プリントを含む未綴じのルーズリーフが含まれているものである。各タイトルの製作にあたって、写真家、執筆家、そしてデザイナーがそれぞれ写真、文章およびケースという構成要素を作り出し、トルーカ出版側がそれらを編集し、グラフィックデザインを施す。
 
トルーカ出版の製作物は写真集と同様に、テキストとの深い関わりを持つ。掲載されているテキストはモノグラフィーに掲載されるような作品解説でなければ、クリス·マルケルや荒木経惟らの写真集に載る、写真家自身による文章でもない。その製作物の柱となる写真の視覚的世界に緩やかに呼応する、独自の文芸作品である。また写真集と同様に、トルーカ出版の製作物は、写真·テキスト·デザインという三つの分野のマルティプル·アートに基づく点において、二十世紀の文化製作技術と深い関わりを持つ。これら三つの分野は、大量生産を視野に入れた技術インフラを必要とする。その点では、トリュカ出版の製作物は現代的な文化オブジェの象徴である。
写真、テキスト、デザイン。トリュカ出版の製作物は三重の意味でマルティプル·アートである。しかし、マルティプル·アートにおいて部数を限定することは極めて恣意的な決断であり、その背景にはだいたい商業的な打算が働いている。写真プリントや版画など本質的にマルティプルであるものを、なぜ部数限定で販売するのか。部数を限定して作品価値を高める戦略は、彫刻の経済モデルに由来する手法である。ところが、トルーカ出版の製作物には、まさに彫刻的なクオリティを見いだすことが可能であり、各製作物を部数限定で発行する意味はそこにある。個々のケースには、独創的なデザイン、豪華な文芸出版とヴィンテージ写真を束ねる、統合的な作品が収められている。トルーカ出版の製作物を鑑賞するうえで重要な要素は、その感触である。写真の粒子(その点において、カンディダ·へーファーの高解像度プリントから森山大道による粒子の荒い東京風景写真まで、トルーカ出版の嗜好は幅広い)、最適な印刷紙の追求(良質な写真集には必ずよい紙が選ばれている)、そして形状と材質をもって写真および文芸作品の世界観を凝縮するケース。これらはすべてテクスチャである。
 
より本質的なレベルで、トルーカ出版による製作物の特徴は写真の時間性を複雑化することにある。一枚一枚の写真は、撮影された時点で独自の時間性を有する。その画像に含まれる記号によって、また写真と同じ紙面に掲載されたテキストとの関係性によって、その時間性が複雑化する。ある蒐集家がトルーカ出版による作品を購入すると、その作品は特製ケースに保護され、外気に触れずにゆっくりと経年変化していく。トリュカ出版による製作物は、写真のタイムカプセルである。
実際に一つの製作物を手にしてその特製ケースを開けると、一般的な書籍のように直線上でない、その出版物独自の空間性が繰り広げられる。トルーカ出版の多くの製作物は未綴じのルーズリーフを使用しているため、写真および文芸作品の体験がより自由になり、展覧会のように複雑なパターンをもって構成される。デュシャンによる『トランクの中の箱』を連想されるものである。ケースには、綴じられた本の代わりに折られた用紙が収まっている。折は空間を区切り、新たな次元を生み出し、読書体験において複雑な時間性を生み出す。折とは非言語的な結界である。
 
コンパクトな書斎にトルーカ出版が発行した全42点の製作物がぎっしりと並ぶ姿を想像してみよう。その個々のタイトルには小宇宙のように、独自の時間性と世界観が含まれている。写真愛好家として、このユニークにして有機的な出版世界をさらに複雑化するであろう、トルーカ出版による今後の製作物の発行を期待するばかりである。
 
大澤 啓(東京大学総合研究博物館インターメディアテク特任研究員)
 
 
トルーカ・エディションズはアレクシス・ファブリーとオリヴィエ・アンドレオッティの二人により2003年に設立され、パリを拠点とするユニークな出版社です。フォトグラファー、ライター、デザイナーとのコラボレーションにより制作されるカスタム・メードの外装は、20世紀初頭に生み出された「アーティスト・ブック」という新しい芸術形式を用いた、ハイブリッドなアート・オブジェです。
 
オリヴィエ・アンドレオッティはグラフィック・デザイナー、アーティスティック・ディレクターとして、カルティエ財団現代美術館、ジュ・ド・ポーム国立美術館、ドーハ・イスラム美術館、パリ市立近代美術館、メキシコ国自治大学付属チョポ美術館などで、定期及び限定出版物、展示カタログ、コーポレート・アイデンティティ(CI)、シグナル・システム、展示デザインなど多岐にわたる分野で活躍しています。また、ルイ・ヴィトン、ヴーヴ・クリコ、ヘネシー、ヴァン・クリーフ&アーペルなどの様々な一流ブランドとのプロジェクトに携わっています。
 
アレクシス・ファブリーは、The Anna Gamazo de Abelló Collection及びThe Leticia & Stanislas Poniatowski Collectionにキュレーターとして関わりながら、「Urbes Mutantes(国際写真センター(ICP)、ニューヨーク、2014年)」、「Latin Fire(CentroCentro、マドリッド、2015年)」、「Daido Moriyama, Daido Tokyo(カルティエ財団現代美術館、パリ、2016年)」、「Transiciones(シルクロ・デ・ベジャス・アルテス、マドリッド、2016年)」、「Géométries Sud(カルティエ財団現代美術館、パリ、2018年)」などの展示でキュレーションを担当。プライベート・コレクションのコンサルタンティングをする一方で、メゾンエルメスの副アーティスティック・ディレクターとしても活動しています。
 
VOL. 6 • Daido Moriyama, Michel Bulteau, Olivier Andreotti, Solitude de l’œil, 2006 © Toluca Éditions

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Flora

NOVEMBER 10 - DECEMBER 16, 2018

開館時間 12:00 – 19:00
閉館日 火曜日・水曜日
入館料 無料
 
The Massでは’ニック・ナイト’による日本初個展を開催いたします
 
現在ニック・ナイトは世界で最も影響力があり、常に最先端を行く現役のフォトグラファーの一人として評価されています。彼は40年にも及ぶキャリアの中で、常に新しい美しさを探求してきました。また山本耀司、ジョン・ガリアーノ、ガレス・ピュー、アレクサンダー・マックイーンを含む、先進的なデザイナーたちとの画期的かつ創造的なコラボレーション や、ディオール、資生堂 、トム・フォード、マックイーン、ナイキのような権威ある企業に向けた前衛的な広告キャンペーンにより、ファイン・アートとファッションの分野でその地位を確立しました。
 
商業的な成功を収める一方で、ナイトには常に探求し、自身に挑み続けたいという欲求から、個人的な側面を表す作品があります。今回開催される運びとなった「Still」では、ある意味、より個人的であり、ナイトの絶え間無き美学的余白への探求が顕著に現れた、特徴的な3作品−「Flora」、「Roses, Photo Paintings」、「Roses From My Garden」−をご覧頂くことが出来ます。私たちが普段見慣れている花々のイメージとは異なり、ナイトの作品がもたらす調和とイメージのバランスにより、私たちは心動かされ、自然が持つ力やその束の間の美しさに思いを巡らせるのです。
 
「Flora」は同名を冠する本として1997年に出版されました。大英自然史博物館の600万点も の標本から選別され、大胆かつ包括的にまとめられた46枚の花や植物のイメージから成り立つこの本は、ナイトとその妻であるシャーロットが、3年半にも及ぶ時間を植物の無限の多 様性が広がる 標本館で費やしたことから生まれました。ここから作り出されたイメージの新 鮮さは揺るぎなく、質素にも美しく均衡が保もたれています。空間上の形式としてそれぞれ のイメージが捉えられ 、境界線や遠近法を払拭することにより、色彩が花開き、構造が枯れ、一部のイメージでは有機的に線が崩れるドローイングであるかのように、作品が現れるのです。それぞれのイメージが持つ美しさにナイトは、完璧で鋭く揺るぎない焦点を合てるのです。
ナイトは標本館に初めて足を踏み入れた時から、植物学に強い興味を抱きました。今回の展示では「Flora」に掲載された標本から、植物の多様性がよく表れた15枚のイメージが選別され、初回限定版のポートフォリオとして、The Massにて本邦初公開となります。「いつもの 日常に、新たな見方を発見することほど嬉しいことはない」とナイトの言葉にあるように、これらのイメージが新しい見方を正にもたらしています。
 
イギリス国外で初めて、これら3作品を同時に扱うこととなった今回の展示では、新たな美の定義と新しいものの見方を発見し、捉えた いと願うナイトの絶え間無き欲求を目撃することとなります。
ニック・ナイトOBE(1958年生まれ)は、イギリス人ファッション・フォトグラファーであり、SHOWstudio.comの創始者兼ディレクターです。また、ロンドン芸術大学の名誉教授を務めており、同校から名誉博士号を授与されています。過去40年に亘り、商業、エディトリアル向けの撮影を手掛け数々の賞を受賞してきました。また、山本耀司、ジョン・ガリアーノ、ガレス・ピュー、アレクサンダー・マックイーンを含む、先進的なデザイナーたちとの画期的かつ創造的なコラボレーションや、ディオール、ランコム、トム・フォード、カルバン・クライン、イヴ・サンローランのような権威ある企業に向けた前衛的な広告キャンペーンにより、ファイン・アートとファッションの分野でその地位を確立しました。
 
W、ブリティシュ・ヴォーグ、パリス・ヴォーグ、デイズド・アンド・コンフューズド、アナザー、アナザー・マン、iDマガジンに掲載されたナイトのストーリーが、業界の伝統的なファッション・フォトグラフィーの常識を打ち破る一方で、ビョーク、レディ・ガガ、カニエ・ウエストに制作したミュージック・ビデオの受賞をもって、優れたディレクター、イメージ・メーカーとしてのその地位を確かなものとしました。1982年に出版された初の写真集「Skinheads」は、1996年にD&AD賞を受賞しました。その後、ナイトの過去12年の仕事を回顧する「Nicknight」、独特な一連の静物で構成される「Flora」をシルマー/モーゼルから出版しています。「Nick Night」の名を冠する最新の写真集は、2009年にハーパー・コリンズから出版されています。ナイトの作品は、テート・モダン、ビクトリア&アルバート博物館、サーチ・ギャラリー、ザ・フォトグラファーズ・ギャラリー、ヘイワード・ギャラリー、ザ・デリム博物館、ザ・ガゴシアン・ギャラリー等の国際的文化機関で展示されています。
 
© Nick Knight, Flora, 1994-1997

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PORTRAIT

AUGUST 25 - SEPTEMBER 23, 2018

開館時間 12:00 – 19:00
閉館日 火曜日・水曜日
入館料 500円 ※学生無料
 
この度、The Massでは8月25日(土)より S.U.C.C.* との企画による『PORTRAIT』展を開催いたします。
 
本展覧会では、’PORTRAIT’ をテーマとし、多様なアーティストの作品を一同にご覧頂ける機会となっております。
 
* S.U.C.C.
京都精華大学ポピュラーカルチャー学部客員教授を務める藤原ヒロシ氏のもとに集まったクリエイションやPRを学ぶ学生の集団。
 
©︎ Mai Kurosaka, Face

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戦争と花

JULY 20 - AUGUST 15, 2018

開館時間 12:00 – 19:00
閉館日 火曜日・水曜日
入館料 無料
 
この度、The Massではフラワーアーティストの東信が率いるAMKK(東信、花樹研究所)との企画による「戦争と花」を開催いたします。
 
本展覧会は「戦争と花」をテーマとし、7~8年ほど前から東 信らによって折に触れて集められた「戦争」と「花」をめぐるイメージを基礎として、国際的な写真家集団マグナム・フォト、報道写真の厖大な蓄積を持つ朝日新聞フォトアーカイブ、共同通信イメージズらの協力も得て蒐集された、戦争を題材とした様々な切り口の写真で構成される展示内容となっております。
 
人は生まれてから死ぬまでの間、祝いの花から励ましの花、弔いの花や祈りの花など、人生の様々な場面で花と寄り添って生きてきました。美しく咲き誇る花の姿に、そして儚く短い花の命に、人は言葉に出来ない感情や願い、慈しみを託して花を捧げてきました。それは戦争という人類の最も醜悪な歴史の一幕においても垣間見れる行為です。世界はここ数世紀の間に飛躍的な科学技術の発展を遂げるとともに争いをも多様化させてきたといえます。今回、この「戦争」と「花」という一見相反する要素を一つのレンズの中で繋ぎ合わせた数々の写真作品を通じて、戦争という人類の負の史実と向き合い、ひとりでも多くの人々、とりわけ若い世代の人々にも平和への思いを深く思慮する機会として欲しいと考え、開催いたします。
 
AMKK
 
フラワーアーティスト東信(あずま まこと)の花・植物を題材とした実験的なクリエイションを展開していく集団であり、その活動は、花・植物のみが有しているもっとも神秘的な形を見つけ、それを芸術的レベルに変換し表現する事で、植物の存在価値を高める事に一貫している。
 
AZUMA MAKOTO • Flower Artist
 
1976年生まれ。フラワーアーティスト
2002年より、注文に合わせてデッザンを起こし、花材を仕入れ、花束をつくるオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を銀座に構える(現在は南青山所在)。2005年頃から、こうした花屋としての活動に加え、植物による表現の可能性を追求し、彫刻作品ともいえる造形表現=Botanical Sculptureを開始し、海外から注目を集めはじめる。ニューヨークでの個展を皮切りに、パリやデュッセルドルフなどで実験的な作品を数多く発表するほか、2009年より実験的植物集団「東信、花樹研究所 (AMKK)
」を立ち上げ、ミラノ、ベルギー、上海、メキシコの美術館やアートギャラリー、パブリックスペースで作品発表を重ねる。近年では自然界では存在し得ないような地球上のさまざまなシチュエーションで花を活けるプロジェクトを精力的に展開。独自の視点から植物の美を追求し続けている。
 
特別開館:2018年8月14日(火)、15日(水)
 
© Bernie Boston / The Washington Post / Getty Images / Kyodo News

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小村 希史 ‘大きな船’

MAY 19 - JUNE 17, 2018

開館時間 12:00 – 19:00
閉館日 火曜日・水曜日
入館料 無料
 
この度、The Massでは小村希史 展『大きな船 / Big Ship』を開催いたします。
 
新たなシリーズであるSubtract (取り去る、差し引く)の作品では、絵の具を塗り重ねて描くのではなく、水々しく塗り描いた絵の具を、さらに取り除く方法で生まれる線や、カスレで「もろさ、はかなさ」そして「不完全さ」の表現を試みています。
 
『大きな船 / Big Ship』と題したタイトルは、訪れた祖母の死、そして日本を取り巻く緊迫した状況、グローバル化、さらには宇宙にまで発想を広げ、混沌とした現代を克服する船、という抽象的な直感から着想を得ています。
Shipの古英語、”scip”(船)とは、もともとインドヨーロッパ語の、”skep”「切る、削る」がルーツであり、friendship、relationshipなどの接尾語の、”~ship”には、”skipan”「形を作る」がルーツとされています。「取り除いて形を作る」、小村の絵作りにも似た要素を垣間見ることができます。
山水画をも彷彿とさせる小村の絵は、どこか記憶の片隅にある原風景を蘇らせるような気づきを与えてくれます。
 
© marefumi komura「Subtract (大きな船 1) 」

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ECAL Design for Luxury & Craftsmanship

MARCH 24 - APRIL 22, 2018

開館時間 12:00 – 19:00
閉館日 火曜日・水曜日
入館料 無料
 
この度、The Massでは‘ECAL Design for Luxury & Craftsmanship’を開催いたします。本展覧会では、ECAL/ローザンヌ美術大学 Master of Advanced Studies in Design for Luxury & Craftsmanship の学士または修士を取得した学生たちの作品をご覧いただけます。
 
ラグジュアリーと職人技術の分野における国際的なブランドとの数多くのコラボレーションの一部をご紹介いたします。展示のプロトタイプに加え、モックアップやイラストレーションスケッチのセレクションの数々からは、学生の制作プロセスを伺うことが出来ます。
 
ECAL / University of Art and Design Lausanne (Switzerland)
 
デザイン、写真、グラフィックデザイン、映画、ニューテクノロジー、芸術の分野で国際的に知名度が高い学校として知られる ECALは、世界の芸術・デザイン学校の中でも常にトップ 5 にランクされていま す。 2011年、アレクシス・ゲオルガコポウロスが指揮を執って以来、ECAL はクリエイティブ業界のリーダーとして成長し、その地位を確立しました。熟練した実業家、芸術家、世界の一流デザイナーや企業、文化機関との数多くのコラボレーションや協力があってこそ、今日このような成果を得ることが出来ていると言っても過言ではありません。ECALでの、チャレンジングで実践指向の教育方針は、学生たちに高い知識や数多くの貴重な経験を促しています。
 
The Master of Advanced Studies in Design for Luxury & Craftsmanship (MAS DLC)
 
このユニークなコースは、高級時計の制作、食器、ファッション、グルメ、メティエ・ダール(美術工芸)などの様々な卓越した分野のデザイン教育を希望する学士や修士、あるいは、貴重な素材を扱うことに関する特別な技術を身に付ける事を希望する者を対象としています。生徒たち(毎年世界で15名程の学生)は、100 年以上の伝統を誇る名高い企業とのコラボレーションや、国際舞台で活躍する人々が開催するワークショップを通じて、製品の生産における全工程を体験します。
 
©︎ ECAL, Einat Kirschner, Hyunjee Jung, Table Clock (mockup), La Montre Hermès, 2016

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政田 武史

NOVEMBER 18 - DECEMBER 17, 2017

開館時間 12:00 – 19:00
閉館日 火曜日・水曜日
入館料 無料

 

ギャラリートーク
11月25日(土) 14:00–15:00
政田武史×石原友明(現代美術作家)
※無料でご参加いただけます
 

The Massでは政田武史による約5年ぶりとなる個展「不機嫌なヤマビコ、加速するアポトーシス」を開催いたします。

 

本展覧会では、政田自身から創り出された「狂気」と「浄化」をベースにしたストーリーを元に大型キャンバスに描かれた油絵をはじめ、クレパスを用いた立体作品では、一般に使用されているクレパスの用途から一度離れ、政田独自の表現にて立体に再び起こし表現しています。

 

SHOPでは政田武史 × fragmentdesign × NOMA t.d.とのコラボレーショングッズの販売をいたします。
 
© Takeshi Masada, Fukigen na Yamabiko、Kiregimi no Yamabiko、Sore ha A-ko no Kokoromoyou, 2017

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Nick Knight Rose Portfolio

JUNE 30 - JULY 30, 2017

開館時間 12:00 – 19:00
閉館日 火曜日・水曜日
入館料 無料
 
Rose Portfolio
 
写真家 ニック・ナイトは、華麗で繊細な花の美しさに魅せられ、2010 年頃からほぼ毎日のように花の写真を撮影し始めました。
夏の間、ナイトは自分の庭からバラを摘み、花の静かな美しさを撮り続けました。永遠に変化する花、色、葉と、人間の生きるしなやかさのイメージを重ね、自然の循環をフィルムに撮り貯めました。
まるで16 世紀のオランダの静物画であるかのような、ニック・ナイトの超写実的な構成は、宇宙のパラドックスを思わせ、生と死、美と醜といった表裏一体の世界観を表現しています。
 
この作品は限定版のポートフォリオとしてリリースされ、全12 作品(24 x 24 インチ)が美しいオリジナルの布製クラムシェル(clamshell)ボックスに入っています。
また、これらの作品は 2010 年から 2012 年にかけて撮影されたものです。
 
©︎ Nick Knight, Roses From My Garden, 2010-2012

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71-84

MAY 27 - JUNE 25, 2017

開館時間 12:00 – 19:00
閉館日 火曜日・水曜日
入館料 ¥1,000 (学生無料)

 

1971-1984年。 この期間に生み出されたファッション、音楽、アートなど様々なムーヴメントは アンダーグラウンドでありながら、今も人々をインスパイアしつづけています。 このシーンを包括的に回顧するエキシビション『71-84』を2017年5月27日よりThe Massにて開催いたします。

全9巻・1468ページに及ぶアートブックを同時に発売いたします。